ラヴェルに取り組む男 浦壁信二ピアノ・リサイタル オール・ラヴェル・プログラム in 熊本市健軍文化ホール
あ、モーツァルトが英語でしゃべっている〜映画『アマデウス』の音楽。ネヴィル・マリナーの2つの演奏。
均斉のとれたお腹のくぼみに産毛を伝わったしずくが溜まる◉ブーレーズ/ストラヴィンスキー:春の祭典, 火の鳥
Sarah Brightman – Dreamchaser [Japanese Edition] (2013)
天体の幻夢的なペルペトゥーム・モービレ
この記事を読むのに必要な時間は約 5 分 34 秒です。
クラシック音楽の初心者が最初に手にするであろう CD は、これで決まり!と断言して、8割は通用するだろう。中にはウィーン・フィルとの旧盤のほうが素晴らしい、弦が美しい、上品な貴族的ムードがあるといわれることもわかる。でもダイナミックさと、録音の良さはこちらがダントツだ。録音の良さだけが素晴らしい音楽だというのはクラシックを聞く姿勢にはそぐわない。そういう声もあるだろう。
しかし、どうだ。こちらの一曲目『火星」を聴き始めると。最初の主題が現れる時にはすでにモチベーションが高まっていませんか。これと比べたら、旧盤では各演奏セクションのデモンストレーションのように感じられる。ウィーン・フィルとの「惑星』では、全体の中盤である「木星」と「土星」の表情に焦点が当たっている。
ホルストの「惑星」の楽曲解釈としては、旧盤が把握しやすい。カラヤンにとっての「惑星」はとうにその段階で肝を掴んでいた。それから20年。ベルリン・フィルにとっても多くの指揮者で「惑星」を演奏し、録音エンジニアも蓄えたノウハウが発揮されている。
スケジュールにどれほどの順調さがあったかなかったかは推測も立たないけれども、指揮者、オーケストラ、エンジニア、アートワークスにおいてもカラヤン衛星の向かう道筋は順風満帆であっただろう。
録音は1981年1月、ベルリンのフィルハーモニーにて。エンジニアは、ギュンター・ヘルマンス。リハーサルで気持ちが上気していたのか、一発本番録りで完成させたといった趣がある。第1曲「火星」からテンポは最初からドライヴ状態に達している。カラヤンの乗るスポーツカーのエンジンが加速する中盤以降で、音の乱れが散見される。淡麗な「惑星」を良しとするなら、ラトルとべルリン・フィルとの演奏が良い。但し、その CD 盤の音はいただけない。演奏、録音は優れているので、真価が聴けるのはハイレゾ音源で楽しめる時までとっておこうと思う。
カラヤンらしからぬ不自然な、ごつごつしたリズム感を感じさせ、金管などの高音もヒステリック。とも言われるが、ここの楽器の音色はいいからそれで良いじゃない。デジタル録音の準備不足ではなく、ぎくしゃくした感じ、不自然なリズムの取り方や歌わせ方はカラヤンの狙いだと同時期のチャイコフスキーと比較すれば観えてくる。
カラヤン、ウィーン・フィルの録音美を定着させた最初のステレオ録音の時の新鮮な初体験を蘇らせる。ホルストは20世紀の作曲家、ストラヴィンスキーやバルトークのバロック的表現に等しい。
全体は徐々に歌い手が減っていくアカペラの女性コーラスでフェードアウトしていく、アヴァンギャルド。ラヴェルのボレロ、ストラヴィンスキーのペトリューシュカと影響しあっている。
天体の動きは止まることのない、幻夢的な無窮動だ。
ウィーン・フィルとの DECCA 録音盤は、ステレオ録音された《惑星》の効果を見せつけた最たる一枚。重戦車が押し寄せてくるような第1曲《火星》。浮遊感に浸る第4曲《土星》から最終曲《海王星》まで前半よりは後半3曲の流れの良さにカラヤン一流のマジックが感じられます。本家筋の天体とは切り離した楽譜の意向を反映させた演奏を逸脱はしていないながら、宇宙旅行をしているファンタジーが加味されている。ウィーン・フィル、ベルリン・フィルの違いは金管などの音色の違いにある程度で20年の開きのある両盤のカラヤンの意図、カラヤンが《惑星》をどう解釈していたのかはそうそう変化は無いように思えます。1981年のデジタル録音のデモンストレーションに大いに使われたCDでしたが、アナログの美しさは充分にある。個々の楽器が聴き分けやすいのはカラヤンの指揮にも寄るところでしょうが、それぞれの楽器に数多くのマイクを使い分けられているようです。もっと精巧で宇宙的《惑星》を聞きたい向きにはひやりとするような最近の録音も少なくありませんが、終曲《海王星》は凍てつく氷の世界に引きづり込まれていくようです。カラヤン名盤の入り口にこれ以上最適な一枚はありません。
カラヤン、40代のウィーン・フィルとの《惑星》と20年後のベルリン・フィルとの両盤。音楽は甲乙つけが足し。個人的にはウィーン盤捨てが足しですが、— 思い出もそこには強くあるしで — これはアナログ盤で聴いてこそ本当の凄みが感じられるものです。ゆえにCDで聴く時はベルリン・フィルでの DEUTSCHE GRAMMOPHON 盤が一番。ただ注意したいのは、同じ録音でもいくつもタイプが出ています。可能ならこのカラヤンGoldで聞くこと。日本盤、廉価盤と比べて自然な音響で浸れます。
これは最もアナログか CD か 優劣無いと思います。CDがこの「カラヤンゴールド」のロゴがあるものであればと付け足しますが、もしそうでなく、日本盤などであったならば昨年出た SHM-CD で買い直されて損はなし。
2011年9月7日に、SHM-CD盤が登場。「カラヤンゴールド」と価格の差はあまりない。アナログのオリジナル盤は、聴いていてこそ優劣つけがたいことが感じられるものです。アナログで充実した音響を楽しめる下準備には、今では SHM-CD 盤がアナログ盤で聞く音をイメージしやすいでしょう。